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2026/03/30 09:00 ~ なし
漢字が書けない=「勉強ができない」ではない ― 見落とされがちな“運筆力”という学習の土台 ―
保護者の方から、
「漢字がどうしても書けない」という相談を受けることがあります。
詳しく話を伺っていくと、
「覚えていない」というよりも、
- 書こうとするとすぐに疲れてしまう
- 文字を書くこと自体がつらそう
- 書く場面になると集中が続かない
といった様子が見えてくることがあります。
ここには学力以前の“土台”の問題が隠れていることが少なくありません。
教材制作の現場で重視している「運筆力」という視点
運筆力とは、
鉛筆を持ち、線や文字を書き続けるための基礎的な身体の力です。
具体的には、
- 指や手首を思うように動かす力
- 線をコントロールする力
- 一定時間、書く動作に集中し続ける力
これらが組み合わさって、はじめて
「文字を書く」という行為が成り立ちます。
教材を作る側の視点では、
この土台が整っていない状態で、文字学習だけを進めることの危うさを強く意識します。
「漢字が書けない」背景にある構造的な問題
教材制作に関わる中で感じるのは、
「漢字が書けない」という状態の背景には、
- 学校に行けていない期間があった
- 書く経験そのものが少なかった
- 書く作業が生活の中で定着していなかった
といった要因が重なっているケースが多いということです。
この場合、
- 書くとすぐに手が疲れる
- 線がうまく引けない
- 書くこと自体がストレスになる
という状態が起きやすくなります。
この段階で、
「漢字を覚えよう」「たくさん書いて練習しよう」と
教材だけを前に出してしまうと、
学習以前に身体が拒否反応を起こしてしまうことがあります。
これは能力の問題でも、努力不足でもありません。
教材設計でまず考えるのは「書ける体があるか」
その保護者の方に、
「字を書く体力が、まだ十分でないのかもしれませんね」
とお伝えすると、
「あ…確かに、そんな体力はないかもしれません」
と、少し安心した表情をされました。
教材制作の現場では、
「できない理由」を
理解力ややる気ではなく、学習の土台に求めることをとても大切にしています。
土台の問題だと分かれば、
対処の方向性はまったく変わります。
「書く前段階」の設計
書く前段階では、
- 線をなぞる
- 決まった方向に手を動かす
- 書く動きを少しずつ積み重ねる
といった、運筆そのものを育てる設計が重要になります。
一見すると遠回りに見える工程ですが、
この段階を丁寧に積み重ねることで、
- 書くことへの抵抗が減る
- 手が疲れにくくなる
- 文字教材に入ったときの負担が大きく変わる
という変化が、はっきりと現れます。
遠回りに見えて、実は「最短ルート」
「もう小学生なのに」
「漢字をやらなければいけないのに」
そう焦る気持ちは、とても自然です。
しかし教材制作の視点では、
土台が弱いまま上に積み重ねることの方が、結果的に遠回りになります。
運筆力を育てる工程は、
決して後戻りではなく、
「書けるようになるための最短ルート」であることも少なくありません。
最後に|私たちが伝えたいこと
「漢字が書けない」という言葉の裏には、
その子なりの理由と、学習環境の背景があります。
もし、
- 書くことを嫌がる
- すぐに疲れてしまう
といった様子が見られる場合は、
一度立ち止まって、
「字を書く体は、今どの段階にあるのか?」
という視点で考えてみてください。
できないのではなく、
まだその段階に来ていないだけ
そう捉えるケースも少なくありません。


